ずっと欲しかったものを手に入れた
凄く 凄く嬉しくて
ずっと眺めたり撫でたりした
大好き だいすき
ぼくの ぼくだけの

きたみさん

「なんか最近、楽しそうですね」
昼休み、同僚の医師が話しかけてきた。
特に親しいという訳ではないけれど、ちょっとした世間話くらいはする仲。
「そう見えますか?」
自分ではそんなことを出してるつもりは無かったのだけれど、やっぱり周りに解るくらいなのかとちょっと照れくさくなってしまう。
「実は、ずっと欲しかったものが手に入って、嬉しくてつい……」
いや、やっぱり解ってしまうかも。
「そうなんですかー。へー意外ですね」
「意外?」
「いえ、島先生もそんな、欲しいものが手に入ってはしゃいだりするんだなって……」
「そうなんですよ……子どもみたいですよね」
こんな……そんなに親しくもない人にまで話してしまうのだから。
「でも、ずっとずっと欲しくて、でも手に入らないだろうって半分諦めてて……」
そう……ずっとほしかったから……
「それは嬉しいですよね」
「そうなんですよ。でも、ちょっと色々と大変なこともあるんですけど」
だからすごくうれしい。
「手入れとかそんなですか?」
「ええ。メンテナンスに結構苦労したりしてます」
「あーそういうのありますねー。でもそういう苦労も楽しいって?」
「そうですね……楽しいですね」


「北見さんただいま」
そう言って、僕は電気を点けながら部屋へと入る。
そこには朝と全く同じ状態で、北見さんが待っていてくれている。
僕の声に顔だけ向けて、“おかえり”代わりの笑顔を見せてくれる。
僕はそんな北見さんの頬に“ただいま”のキスをして、僕がいない間の暇つぶしにと点けておいたラジオを消して、カーテンを閉める。
それから北見さんの具合を診て、今日一日の事を話したりしながら色々と世話をする。
話と言っても仕事の話しかないし、毎日そんな変わったことがあるわけでもないし、きっと北見さんはつまらないと思う。
だけどいつも、たまに頷いたりしながら真剣に僕の話に耳を傾けてくれる。
そんな北見さんが大好きだし、こんな時間を大切にしたい。
「今日は同僚の医師に『最近楽しそうですね』って言われました」
きっと相手は、その対象が物ではないのを……
そして話の内容が、こんなことなんだとは想像もしなかっただろう。
そう思うと、ちょっとおかしかった。
「?」
クスクスと笑う僕の様子に、北見さんが不思議そうに首を傾げる。
「僕は今、凄く楽しくて嬉しくて……幸せです」
僕がそう言うと、同じだと言うように北見さんが頷く。
「ずっと欲しかった……」
北見さんの頬を撫でる。
すると北見さんは恥ずかしそうに、少し首を傾げて笑った。

「視線も……」
そっと閉じた瞼にキスをする
その瞳はもう何も映せないけれど
だからこそ逆に、僕しか映らない

「唇も……」
そっと触れるだけのキスを何回もして
それをだんだんと深くしていく
離れた唇から、熱い吐息が漏れる

――たつや――
そう優しく僕を呼んでくれた
「声も……」
もう今は空気を震わせるだけだけど
僕にしか聞こえないけど

「無くした手足さえも」
そっと失った手足の先にキスをする
北見さんと僕の熱が一緒に上がっていく

北見さんの全ては
ぼ く の も の


「ホント……子どもみたいですよね……」

北見さんの肌に汗が落ちる
それは北見さんのと混じりあって
シーツに吸い込まれていった

――欲しいものは全て手に入れないと気が済まないなんて――