「こんにちは」
冬の気配が漂い始めたある秋の日、その人は車椅子を押す僕に話しかけてきた。
「散歩……ですか?」
その人はそう聞いてきたので、素直に僕は「はい」と答えた。
「日差しが気持ちよかったので、北見さんと散歩を……」
「北見さん?」
その人は怪訝そうに聞いてきたので、僕は車椅子の上を示した。
「ああ……その……人?」
車椅子の上に座る北見さんを見てそう言ってきたので、僕は素直に「ええ」と頷いた。
「僕の大切な人です」
その人はまた怪訝な顔をしてた。
それもそうかと思う。
親子と言うには歳が離れてないし、かと言って兄弟と言うには似てもいない。
僕はもう少し詳しく話そうと思った。
昔すごくお世話になった人で
そしてとても好きで
大切で
今はこんな姿になってしまったけれど
その気持ちは全然変わらなくて
だから……
「北見さんとこうして一緒にいられるだけで、僕はとっても幸せなんですよ」
そう言って笑った。
どうして今日会ったばかりの人にこんな事を話してしまったのか解らない。
でも、この人になら話しても大丈夫。
何故かそんな気がして、つい長くなってしまった。
そろそろ夜の気配が押し寄せてきて、少し寒くなってきた。
「北見さん、そろそろ帰りましょうか……」
そう言ってから、僕は車椅子を帰る方向へと向ける。
そして「さようなら」とその人に会釈した。
「さようなら」
その人は同じように会釈を返す
「達也……」
車椅子を押す僕の背中で声がした気がする
その声は凄く懐かしい感じがしたけれど
すぐに風に紛れて消えてしまい
僕はそれが誰なのか思い出せない